ずっと書きたくて放置してたこのネタ。

マスコミの猛省をうながす
 吉田老が異常なまでに尊敬した英国の政治、ことに英国の議会政治が今日のように衰退の一途にあるのは世界的に考えてみて残念なことである。がふりかえってわが国の議会政治の実態を考えてみると、ひと様のことなどいえる資格はわれわれには全然無いことを認めざるを得ない。ついこの間閉会になった議会の現状など目をおおうものがある。
 政府が悪い、与党がなってない、反対党が無茶だと批判しはじめればきりがないが、私はまずマスコミの反省を望みたい。新聞などの一番大切な使命は真相の報道である。「健保」とか「大学法」とかの国会における可決は、新聞によれば政府与党の一方的な横車である。私は別に佐藤内閣のシンパでもないし、自民党員でもない。また社会党ぎらいでもないし日蓮大聖人のおしえに反対せんとするものでもない。共産党の主張することすら部分的にはよく賛成するものでもある。議会における反対党の人々といいたいが、実は国会議員の先生方で議会政治と言うもののプリンシプルを、冷静にそして具体的に考えてみた人は何パーセントいるのか。議会政治は多数政治であるというような単純なお題目はみなさんご存知だろうが、多数政治と言う政治のあり方の遂行方法と過程をご存知なのか。
 たとえば政府与党が過半数を制している議会においては、政府与党の提出する法案が通過成立することは当り前であるということを認めないのか。政府与党が提出する法案が反対党から見て不適当な場合は、不適当であると考える理由を国会を通じて堂々といえば事足れりである。法案通過を「実力」で阻止するとか審議を拒否するとかということはこれ自体が議会政治否認であると考えないのか。法案成立を阻止するために審議の引きのばし戦術を採用するとか採決をおくらすために、牛歩戦術というような、「非合法」なことが堂々と国会内で横行したり。それをさも普通のことのように報道しているマスコミの良識を疑いたくなるのは、私だけか。政府与党がよかざることをたくらんでいるのならそういう政党、または間接にその政府を選出した国民の不明である。
 現今の反対党の御連中にくれぐれも考えていただきたいことは、政府自民党の不明、無能、横暴を批難することはそれらの人々を選出した国民を批難していることと同じであるということである。国会議員は主権者たる国民の代表であって、代表が主権者を批判してよいものかどうかじっくり考えてもらいたい。
 政府、自民党がダメならその判断は主権者たる国民がします。国会の先生方の審議拒否とか、牛歩とかさみだれとかいう戦術で政府の国会活動を阻止したり妨害したりなさらなくても審判は国民がします。自民党政府の意図する法律が不適当なものとお考えになっても、多数を制しているかぎりその法案を阻止する権利はあなた方にはありません。それが議会政治と言うものです。これは横暴ではありません。「実力阻止」こそ横暴であり暴力であり横車であるのです。
 反対党がその法案をそんなに嫌なのなら、この次の総選挙に勝って絶対多数を制して自民党内閣をたたきつぶしてその法律を廃止すればよいのです。いま反対党のあなた方には、政府の提出する法案を阻止する権限は国民から与えられていないのです。子供じゃあるまいし、そんな幼稚なお説教を聞く耳は持たないとおしかりを頂くことは必至でしょうが、そんな幼稚なことすら行われていないのが現在の国会のあり様ではないのでしょうか。

 重ねてしつこく言いますが、政府自民党は自分の考えている政策を法制化して実行に移す権限を国民から与えられているのです。そんならどんな無茶をしてもいいのか。実力を以てしてもそれを阻止することが反対党の国民に対する義務だとお考えになる先生方がいるのなら、そういう先生方にあえて申上げます。国民の良識をなめてはいけませんよと。政治家が一番恐ろしいものは国民の判決です。馬鹿な政治をやった政府でこの判決の制裁を受けなかったためしはありません。このごろのマスコミの論調をそのまま輿論だとお思いめさるな。国民はそんなに軽率でもないし一方的でもありません。ただもっともっと国民が主権者であって主権者のみが最後の判断を下すものだという単純な事実を認めて、それを信じて下さいとお願いするばかりです。
 この頃の議会政治のあり方はあまりに馬鹿げています。こういう間隙につけこむのが、独裁政治などの非民主的の政治体制です。日本も民主政治になってから、もう相当の時間が経つのにこのありさまではさきが思いやられます。民主主義がもらいもので附けやきばであることは残念ながら事実ですが、国会ぐらいはすくなくとも、民主主義は板についてきた位の印象を国民に与えるべきだと思いますが、どうですか。
 それが少々ウソであっても。
(「諸君!」1969年10月号)
引用元:P244-248

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野党がやるべきは自民党の足を引っ張ることでも、気に入らない法案を廃案にすることでもなく、自分たちの主張を広く国民に知らしめ次の選挙において与党よりも多くの支持を集めるべきじゃないのか。
マスコミのやるべきは与党を攻撃することでも特定の法律、政策を攻撃することではなく何が起きているのかの真実を報道することじゃないのか。
佐藤内閣→安倍内閣にするだけでこの文に何の違和感もない事に政治家もマスコミもそろそろ気付いても良いと思うんだ。


以下最近のがっくり来たニュース。
「共謀罪」創設、今国会成立を断念…重要法案を優先 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

成立を目指せば、法案に強く反対する野党の審議拒否などで国会の混乱が予想されることから、与党は重要法案としている教育基本法改正案などを優先すべきだと判断した。来年の通常国会以降の成立を目指す。
(中略)
 民主党はこれまで共謀罪創設の必要性は認め、今年の通常国会でも、共謀罪の適用範囲を限定する与野党修正協議に応じていたが、今国会を前に、法案成立そのものを認めない方針に転換した。民主党は信託法改正案の審議を最大限引き延ばし、組織犯罪処罰法改正案の審議を阻止することにしている。

 民主党・高木国対委員長は26日、下村官房副長官が25日に従軍慰安婦への旧日本軍の関与を認めた93年の“河野官房長官談話”を再検討すべきだと発言したことについて、安倍首相の発言とつじつまが合わないとして、今後、真意をただしていく方針を示した。
 「河野洋平談話、従軍慰安婦の問題ですけど、これはもう少し、事実関係を研究し合って、結果、どうなのかということについては時間をかけて客観的に科学的な知識をもっと収集して考えるべきではないか」?下村官房副長官は25日、安倍首相が国会答弁で踏襲(とうしゅう)する考えを示した“河野官房長官談話”を再検討する必要があるとの認識を示した。
 これに対して民主党・高木国対委員長は26日、「首相と官房副長官が違ったことを言っていれば、どちらが本当かたださなければ国民に説明がつかない」と批判し、今後、国会で真意をただしていく方針を示した。
慰安婦“河野談話再検討”発言に民主党反発@日テレNEWS24